【被食・スカトロ系】
「いただきまーす」
「○×◇★★※!」
「あむ」
毎度の事ながら、何を言っているのか分かんない。いや、多分『助けて』だとか『食べないで』だとか言ってるんだろうけど。まあ、聞こえないし、弱肉強食ってことで。美味しく食べてあげるから、諦めてちょうだいな。
「……◇○▲」
しばらく舌の上で転がしたり甘噛みしてやると、しょっぱい液体を出す。そうしたら、もう少しだ。始めの内は激しかった抵抗も、じきに弱くなる。唾液を全身に被ってだくだくになったら、呑み込む。ここで、噛まずに燕下するのがポイント。噛んじゃったら口の中が生臭くなっちゃうから、やめた方がいい。出る体液も、あんまり美味しくないしね。
食道を通って胃の中にたどり着くと、また抵抗を始めるんだけど、とっても弱々しくて。お腹の内側から軽く刺激されて、抵抗はかえって気持ちいいんだ。マッサージされてるみたいで。
いろいろと試してみたけど、やっぱり妖精は踊り食いが一番良いね。
胃の中からの抵抗にのほほんとしながら、あたしはそんな事を考える。
しかもあいつらは不死の種だから、原型を失っても動く。例えば、胃でどろどろに溶かされても生きてる。もっとも、液体だから動く事は出来ないんだろうけど。……でも、固体になったら? ――なんと、動くんだよね。面白い事に。
考えてごらんよ。うんちが、ずりずり動くんだよ? あたしから逃げようとするみたいに。それが、あのすばしっこい、利発そうな妖精の成れの果てだと思うと。
すっごく笑えるよね。滑稽でさ。
この前捕まえた奴なんて、ツーンとしてて、見るからに気が強そうでさ。捕まえたら指に噛みついてきちゃって。……まあ、あたしからすれば蟻に噛まれたみたいなもんだから、なんて事無く食べちゃったんだけど。そうしたらさ、腹の中で暴れる暴れる。いつもより、倍の時間ぐらい楽しませてもらったのよ。
んで、お尻から出す時になってね。あいつ、ウサギの糞みたいになってたんだ。ころころの、球みたいな形に。ケッサクで、思わず声を出して笑っちゃったよ。……まあ、それからは、そいつも何時も通り私から逃げようとしてさ。あの強気な、ツンツンした感じはもうどっかいっちゃったみたいで。少し観察しただけで興味が無くなったから、粉々になるまで足で磨り潰してやった。多分、今ごろは良い肥やしになってるんじゃないかな。不死だからどうなってるかは知らないけど、ね。
つまりは、食べた後も出した後も楽しませてくれる、良いことずくめの食べ物なんだ。妖精って。……あ。
「……きた」
お腹がくるくる鳴いた。お尻のあたりに、何かがつっかえてるような、あの感じがした。だからあたしは、毎日トイレの為に使っている草村に入って、ズボンを下ろした。
「ん……!」
座って、早速いきむ。お尻の穴が開いて、中身が顔を出すのがわかる。茶色の、汚ならしい中身が。生理的な、本能的な気持ちよさに、若干だけど、息があがる。
おおよそ乙女にあるまじき下品な音を立てながら、排泄は続く。……あたしだって、エルフだって、妖精だって、生き物だ。おならもするし、うんちもする。生理現象だから当然だろう。それにこの森には私以外いないし、何も恥ずかしくはないさ。
「……ふぅ」
すぐに大用は終わり、一息つく。すっきりした。今回は途切れずに終わったから、けっこう気分も良い。落ちいた木の葉で、お尻を拭う。
――さて、と。自分のうんちに目を向ける。
ずり、ずり。
「……くっ。あはは!……はは!」
お腹が痛い。やっぱり、いつもと同じように動いてる。あのくっさい塊が! 期待通り。妖精の、あの美形の一族は、こんな残り粕になってまで逃げたいんだと! シュールで、おかしくて、倒錯的で、笑いが込み上げてくる。
……大をして後ろがスッキリしたら、遅れて小用もしたくなってきた。ちょうどいいや。ズボンを下げたまま、その茶色の塊の方に向き直る。
「くく……」
込み上げる笑いを堪えながら、あたしは構えた。そしてすぐに、軽い音を立てておしっこが私の穴から飛び出した。あたしの股から淡い黄色の滝が、妖精の成れの果てに向かって落ちた。
びちゃびちゃと、おしっこがうんちにかかった。ずりずりと逃げようとす動きも、鈍くなる。あたしの水を全身に浴びて脆くなったんだろう。綺麗なバナナのような形が、ぼろりと崩れて真っ二つに割れる。それだけじゃなく、少しずつ溶けているようにも見えた。
――今、どんな気持ちなんだろうなぁ。
あんなに可愛かったのに、こんな汚物にされて、逃げることも許されず、あげくの果てにおしっこで溶かされて。惨めだろうなぁ。悔しいだろうなぁ。
ちょっとだけ、興奮した。
あたしの小用が終わる。見ると、先ほどまで必死に逃げようと動いていた、整ったバナナの形をした茶色い塊は、あたしのおしっこを受けて見る影も無くぐちゃぐちゃにとろけていた。……それでもときどきピクピクと動くのは、気のせいじゃないだろう。
……ふっと、飽きた。
ほっといても地面に吸い込まれて肥やしになるだろうけど、きつい、腐卵臭とアンモニアの臭いが嫌だったし、自分の排泄物をそのままにしておくのも何だかこっ恥ずかしかった。
だから、汚物に周りの土をかけて残らず埋めると、上から踏んで綺麗にならし、いつも通り、跡形も無く消した。
そして、その草村を後にした。
◆ ◆ ◆
次の日のことだった。
「なんだよこれ……」
いつも通り妖精を食べて、出してやろうと思ってトイレという名の茂みに向かったら。
「なんで木が植わってるんだろ?」
ぐるぐる。お腹が鳴く。……まあ、後でいいや。とりあえず、出さないと。
◆ ◆ ◆
場所を移して、小さな穴を掘ってそこにした。お腹の調子が悪かったからか下しちゃって、どろどろだった。小用と混ぜてみたけど大した反応は無かったし、つまらなかったから、すぐに埋めた。
さて。そんなことより。
「この~木なんの木? 木ですから~♪」
何の木だろう。下手に触ってかぶれたりしたらやだなぁ。トイレだった場所にあるもんだから、なおさらだし。ばっちい気がする。……やっぱり放置かなぁ。
そう考えた時だった。
「……? 甘い匂いがするなぁ?」
鼻をくんくんさせて、出所を探ると、その木になった果実に行き着いた。それがまた、怪しくて。
大きな木に、ぽつんと1つ、スイカぐらいの大きな木の実。うん。とっても怪しい。 いや、まあ、食べるかどうかはおいといて、怪しいな~とは思うんだ。すごいいい匂いがするんだけど、ね。
……なんだろう、この木の実。優しい桜色で、甘い、いい匂いがする。それにつられてちょっと触ってみると、水面みたいに波紋ができた。すごくぷるぷるしてる。多分、この薄皮の中には果汁がいっぱいに満たされてるんだ。
ぐぅ。出したばっかりで空っぽのお腹が大きく鳴る。……そういえば、下痢した後は水分とった方がいい、とか言ってたしね。母さんが、昔。
……どんな味がするんだろう。桃みたいに甘いのかな。それとも、柑橘系のみたいに酸っぱいのかな。
ごくり。生唾が想像してたら、生唾が沸いてきた。きっと、すごい美味しいんだ。甘くて、柔らかくて。
「まあ、食べても大丈夫だよね? うん、こんなに美味しそうなもの、食べて大丈夫に決まってるよ!」
よしっ! 大丈夫だ! というわけで、実を枝からもいで。
「いただきまーす!」
がぶりと音を立て、大きな口でかぶりついた。ひんやりとした果汁が跳ねて、頬を心地よく叩いた。そして、肝心の味は。
「おいっしい! すごい!」
濃厚で、甘くて、みずみずしくて。それでいて、しつこくなくて。興奮と喜びから、思わず叫んでしまった。もう1口、もう1口と齧っていくけど、止められる自信が無い。……止めなくてもいいか。ただ、お腹いっぱいになるまで、この木の実を頬張りたい。
でも、実際は限りがある。
「けふっ。よく食べたぁ……! ごちそうさま!」
とっても大きかった木の実を、丸ごと平らげてしまった。たくさん食べたはずなのに、まだ食べたいと心のどこかで思ってしまう。いや、今はお腹いっぱいだから大丈夫だけど。また、明日にでも探そうかしら。
――ん。お腹いっぱいになったら、眠くなってきた。……今日は、気分よく眠れそうだ。
寝床に帰るのも億劫だったので、あたしはその木に背中を預け、目を閉じた。
「おやすみぃ……」
◆ ◆ ◆
ん……けっこう寝ちゃったみたい。身体が軽い。なんだか、頭もすっきりする。大きな伸びを1つ。そして、目を開ける。
……あれ? なんか、辺りの景色が大きい。あのいつも見てる花の丈だって、あたしの身長ぐらいあるように見える。それに、背中がムズムズして、身体もスースーして……。
自分の身体を見ると、そこには生まれたままの姿のあたしが。寝惚けた頭が、一気に覚醒する。心臓が飛び出るかと思った。
その勢いで、背中を触ってみると、経験の無い感触が。まるで『羽』が、生えてるみたいな。ますます、パニックに陥る。
あたし、何で裸なの!? 服は? この森にはあたし以外いないはずなのに! それに、なんで!
「なんで! あたしが妖精になってるのよ!」
叫んだ。そしたら泣きたくなってくる。というか、ちょっと泣いた。
「くっ、うっ……!」
落ち着け、落ち着け。……ふぅ。まずは何故こうなったか考えろ。それから、どうやったら元に戻れるのかも。積極的に考えれば、何とかなるはずだ。
「……ふぅ。まずは。多分……あの木の実を食べたから?」
十中八九そうだ。それじゃあ、逆に。
「元に戻るには、どうすればいいんだ?」
早くも、暗礁に乗り上げた。頭が痛い。苦しい。あんな木の実、食べるんじゃ無かった。なんで食べてしまったのか、過去のあたしを問いただしてやりたい。もし、戻れなかったら――
――妖精って、不死の種族だから、永久にこのままってこと? それってあんまりだよ!
暗い未来を見てしまった気がして、感情的になってしまう。……1度、深く息を吸って、吐く。落ち着こう。別の事を考えよう。
……この羽、動くのかな?
背中に意識を集中させてみる。すると突然、身体が宙に浮いた。
「ひゃあああ!」
高さは、正味30センチもないだろう。でも、あたしにとっては身長の数倍だ。心臓がどきどきする。怖くなって、降りたくなって。そうしたら、私の思いを汲んだように、すっと地面に降りれた。
もう1回、背中に意識を持ってく。身体が浮く。今度は、さっきよりも高い。けれども、不思議と怖くはなくなった。ふよふよと、水の中を泳いでいるような、心地よい感覚。下を見ると、かなり地面と離れていて。びっくりして、降りた。
……もう一回、やってみよう。
いや、楽しかったわけじゃなくて、うん。1度でいいから飛んでみたいなーなんて、小さい頃から思うでしょ。誰でも。……こんな時じゃないと飛べないしさ。ね? 多分、飛んだら元に戻るいい方法も浮かぶと思うんだ。
「よし!」
もう一度集中! 上へ!
ふわりと、身体が浮く。すぅっと、綿毛みたいに上昇できる。すごいすごい! 遠ざかる地面がとっても嬉しい。このまま、いけるところまで――
視界の端に、大きな手が見えた。
次の瞬間。衝撃が身体中を走る。急に、手足が動かなくなる。見ると、身体が大きな手に握りしめられていた。――後ろから、捕まえられたんだ! そう理解するのに、時間はかからなかった。
「●△※♪◎」
「放せ! 放せよう!」
振り向くことも出来ないまま、ただ、もがく。が、一向に放す気配が伺えない。それになんだか、後ろから生暖かい風が……。息……?
悪寒。鳥肌が立つ。まさかまさか、こいつ。
あたしを食べようとしてないか?
必死に手足をじたばたさせようとするが、ますます握りしめる力が強くなるだけだ。逃げられない。怖い。嫌だ。死にたくない。嫌だ……!
そいつが大口を開けたのが、後ろを向いてても分かった。
「○☆■」
「うわああ! やめろ! くるな」
「○▲」
視界が真っ赤になる。口の中に放り込まれたんだ。必死にじたばたする。硬く閉じられた口を蹴ってみたり、引っ掻いてみたり。出なきゃ逃げなきゃともがくけれど、一向に開く気配は無い。
「ひゃあ!」
ぶにぶにしている地面が、突然盛り上がる。目を白黒させていると、なんだかトロトロした液体が、地面から出てきた。 ここで、自分が口の中にいる事を思い出す。唾液だ!
「ひぐっ!」
瞬間、舌が私を端っこに突き飛ばす。すると、閉じられていた奥歯が開いて、私を挟む。噛み千切られる! そう思った。
けど、奥歯はあたしを優しく、丁寧に甘噛みし始めたんだ。全身余す所無く。胸も、大事な所も。
……恐い。けど、変な気持ちになってくる。蒸し暑い中で、ねばねばした唾液にまみれて、身体中を刺激されて。身体が火照ってくるんだ。
そうこうしているうちに甘噛みが終わり、拘束が解けた。だからあたしは、さっきと同じように暴れようとするんだけど。なんでだろう。全然腰に力が入らない。逆に、腰から力が抜けていくみたい。息が荒くなる。
……ひょっとしたらさ。さっき噛まなかったし、終わったら出してくれるのかな? それに、私がエルフだって気付いてるのかもしれない。
そう考えてぼうっとする私に、ざらざらした舌が絡み付く。くすぐったい。舐められてる。足も、お腹も、お尻も。気持ちいい。
「あっ……」
変な声が出たから、慌てて口を塞いだ。けど、あたしが恥ずかしがるのなんてお構い無しに、舌は身体中をねぶる。
顔に吸い付いてきたり、胸に吸い付いてきたり。汚いあそこまで、ちゅうちゅう吸われて。何かが出そうになる。胸の奥が苦しい。お股がうずうずして、頭が出せ、出せ、って命令する。けど、なんだかお漏らしするみたいだし、出したら頭がバカになっちゃいそうで、恐い。
ここでまた、不意をついての甘噛み。耐えきれなかった。
「出ちゃっ! や……っ! ――――!!」
何かが弾けたみたい。真っ白にフラッシュして、気持ちよくて。腰がガクガクするし、じんじんと身体が震える。それにつられておもらししてしまった。
あたしに吸い付いていた舌は、それを味わうように動いてるし。恥ずかしくて、仕方がない。
でも、たぶん。終わったみたいだからさ。出してくれるよね?
あたしが喉の奥に吸い込まれたのは、そう思った瞬間だった。ねばねばした唾液で滑ってうまくもがけないままに。狭い管へと落ちていった。
◆ ◆ ◆
約束が違うと思いながら、食道を通り抜け。あっという間に胃にたどり着いた。広い空間に出たら、ずいぶんと楽になった。……暴れれば、吐き出すかもしれない。 そう思って、力を振り絞って壁を叩く。何度も、何度も。
だが、現実は非情だ。
私を吐き出す前に。壁を貫く前に。壁から、床から。酸っぱい臭いの液体が、どろどろと溢れてきたのだ。
「……やば」
ぽろりとこぼすと、それに呼応するかのように、肉壁が迫ってくる。本格的にやばい。足の裏が熱い。迫る壁を蹴る、殴る。が、拳は弾き飛ばされ、足先の衝撃は吸収され。そうこうしてる間にも、壁はあたしに向かって涎を垂らすみたいに胃酸は下に溜まっていく。
「うううう!」
熱い。嫌だ。……嫌だ嫌だ嫌だ! 殴る。殴る。叫ぶ。が、ダメ。底に溜まる胃酸。もう、くるぶしぐらいまで溜まっている。熱い。やがて、あたしの体力が底を尽きかけてくる。まだ動ける。まだ、まだ。そう思って身体中を引きずる。
ぱしゃり。
「あれ?」
水音。視界が、横になっている。――転んだんだ。遅れて、身体中が熱くなる。熱湯をかけられてるみたいな。思わず顔をしかめたけど、熱いお風呂だと思ったら、すぐに慣れた。……何でこんな熱湯がこんなとこに……
――――溶かされてる!?
飛び起き、立ち上がろうとする。が、身体にうまく力が入らない。やばいやばいやばい! 頭では焦るけど、何の意味も無い。それでも。無我夢中で、腕を立てて体勢を整えようとする。
「わぷっ!」
転んだ。頭から胃酸の水溜まりに突っ込む。何で!? 見ると、手があり得ない方向に……というか粘土細工のように、ぐにゃぐにゃと曲がっていた。関節なんてまるで無視だ。……まさか。
嫌な予感がした。
恐る恐る、四肢に目をやる。そこには、先ほどの腕と同じように、不恰好にひしゃげた手が、足が……!
「う……あ……あ!」
絶叫するつもりだった。けど、声が出ないんだ。熱い。嫌だ。死にたくない。こんなの、嫌だ。
私の思いなんかとは別に、じわりじわりと胃酸が身体を侵食していく。じんじんする身体と、火照る頭。もう、助からない。
そう思った瞬間。 にゅるりと、足が何かに吸い込まれる感じがした。
……え?
視界の端に、小さな穴。胃酸のお風呂の排水溝みたいな、穴。それが、私の足を吸い込んでいく。ごくごくと、獲物を丸呑みするみたいに。――嫌な予感がした。でも、ここから出れる、とも思った。
躊躇う。けど、私に選択肢は無かった。
私は、抵抗する事なく、穴に吸い込まれていった。
◆ ◆ ◆
「ぷはっ!」
穴から顔を出す。
穴は狭くて長かった。途中、ヒダヒダが身体をくすぐってきたり、何回かつっかえた。けれど、ぐにゃぐにゃのタコみたいになってたからか、私の身体はそんな苦労せずに通り抜けられた。
そして、今。仰向けの姿勢で、広い場所に放り出された。
酷い臭いのする所だった。
それでも、さっきなんかよりも全然マシだ。息苦しくないし、広い――
「ふぎゅっ!!」
壁が、迫ってきた。四方八方から。
狭い。苦しい。もがくことも出来ない。ぐにゃぐにゃになった身体を、小さく、小さく圧縮してるみたいだ。お尻が引っ付いて、割れ目が消える。原型を留めていた手足の指先がお腹と引っ付いて、一体化した。両足が引っ付いて一本になった。胸が、圧縮されて、ぎゅうぎゅうに潰された。
潰されて、丸められて、形を整えたと思ったら、また潰される。粘土になって、小さな子供に遊ばれてるみたいだ。でも、最終的には、ある形に近づいていく。
――細長い、なめらかなバナナみたいな形だ。ぐにゃぐにゃこねくり回されながらでも分かった。けど、分かったところで何の意味も無い。
もう、動かない。……辛うじて、全身をくねらせる事は出来るけれど。ミミズみたいに。……ミミズ。
ずんぐりと、太いミミズ。そう言っても差し支えないぐらいに、あたしは姿を変えていた。エルフだった頃の面影も、妖精だった時のそれも最早失われて。ただの、軟弱な棒だ。柔らかくて、太くて。それで――
「いっ!!」
――壁の締め付けが、いっそう強くなった。もう、あたしは小さくならないよ。そう思うぐらいまでに縮んだのに。
まるで何かを搾り取るみたいに、壁はあたしを圧縮する。
……搾り取る? そういえばここって、お腹のなか…………!! 水分を吸いとられて、それで、それで!
うるさい頭の中とは反対に、あたしの身体だった塊はぎゅうぎゅうと小さくなる。圧縮の代償は水分。じわりじわりと力が抜けるみたいに、身体が渇いていく。
「ぁ……や……ぁ……」
なめらかなバナナみたいだった形は、ヒビが入って凸凹した、汚い面へと姿を変える。色も肌色から、茶色へ。あたしの密度が上がるにつれて、あたしという存在から離れていく。残るのは、100パーセントのあたしから出来た、茶色の塊……。
……うんちになんて、なりたくない……。
もう、手遅れだった。
身体つきも、知識も、今までの思い出も、未来への希望も。全部そのままに脱水圧縮して、あたしという存在は。排泄物と成り果てた。あたしを食べた奴の、残りかすに。ただの生理現象に組み込まれるんだ。
あの、今まであたしが食べてきた、妖精みたいに。
「…………ご……め…………さ……」
それ以上、声は出せなかった。
◆ ◆ ◆
ぶすっ、ぶすっ、と汚い音が聞こえる。光が見える。出口だと、本能で理解していた。
ひび割れた身体で、頭で出口をつつくと、それは私の身体の形に合わせて大きくなった。光に包まれる。
外へ。
……お世辞にも、綺麗な音とは言えなかった。汚い音だ。排泄物を肛門からひり出す、あの不愉快な音。それが、あたしの身体を揺らす。
先端が出てからはあっという間だった。ずるずると身体が……茶色いバナナの腹の部分が追従するだけだ。
ぼとりと重たい音を立て、あたしは着地した。その衝撃で、先っぽがひしゃげた。
地面に、外に辿り着いて。あんな目にあって、こんな姿に……。それなのに、もう流す涙も何も無いなんて。
いっそ死にたかった。なんで意識があるのか。さっさと終わりにしてほしいのに。それなのに。それなのに……!
この場から、逃げ出したくてたまらないんだ……!
あたしを食べたこいつから、見つからない所まで。早く、早く!
塊になって動かない身体を、必死に引き摺って前に進む。逃げなきゃ。後ろから笑い声が聞こえるけど、かまうもんか。逃げなきゃ。
と、突然身体に液体がかかる。薄い黄色で、暖かくて。……すぐ、おしっこだと分かった。
びちゃびちゃびちゃ。汚い音と共に全身に浴びて。と、身体が溶けるような感覚に襲われる。なんだか、じわじわと、消えてくみたいな……。いや、違う……! 本当に溶けてるんだ!
ふっと、この前にあたしがうんちにおしっこをかけた時の事を、あの時のどろどろになった汚物の姿を、頭の片隅から思い出した。
茶色い、一本の塊に成り果てた身体が、じわじわと浸食されていく感覚がある。ちょうど腸で吸収された水分が返ってきて、暖かく、優しく全身を包み込む。動けない。身体が、動かないのだ。
そうか……。あたしは、食べてきた妖精たちと同じで。もう、完全にうんちになっちゃったんだ。
そう認識した瞬間、ふっと意識が遠くなった。小水が身体を打つ、濁った音が、やけに近く感じる。
もう二度と、あの楽しかった日にも、エルフの姿にも戻れない。あたしはただの、排泄物だ。放っておけばハエがたかって、大地の肥やしになって。
そんな、ただの残りかすなんだ。あたしは。
身体中に響く、不快な水音。あたしの世界の終わり。この上なく惨めで、滑稽で。
……ああ。せっかく、生きてきて。あんなに楽しかった、のに。……こんな、物に、され、て。あ……ふ……。あ…………。
音が止まる。用が終わったのだろう。
――ずっと見えなかった、エルフの顔が見えた。よく知ってる顔だった。
…………え?
あたしの、顔。
……まって。あたしは、ここに…………あ、れ?
あたし、は、ただの、うんち、ってさっき、さ。
エルフなのは、あたし、だから、あたし、は。
あたし、は。
混乱したまま全身に、土がかけられる。埋められるのだと理解していた。あっという間に、真っ暗闇に閉じ込められる。そして、上から圧力が加わって。ぶにゅぶにゅと身体が拡がって、地面に吸い込まれてゆく。もう、戻れない。動かない頭で、消えていく身体中で、それを感じていた。
諦めと共に、意識をフェードアウトさせる。
…………。
…………。
…………あ……れ?
………………終わら……ない……の?
え…………うそ…………この……まま?
『不死の種族らしいから。まあ、どうなってるかは知らないけどね』
…………やだ……ぁ。だれ…………か。
たす…………け……て……!
やっと、分かった。
これからは、エルフとしてではなく、妖精としてでもなく、大地の『肥やし』として、時を過ごすことを。
永遠の、時を。
了
- 2014/02/11(火) 13:30:05|
- 被食・スカトロ系
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